藤原知先生
藤原知先生は、元解剖学者(大阪市
立大学助教授)で、かつてボンハン学
説の解剖組織学的検証と解説をされま
した。
ボンハン以後も、経穴経絡の実態研
究や古典研究に様々なアプローチをされ、竹山晋一郎先生のご意志を受け継
いで、斯界の復興を一貫して念じた文
筆を揮い、私達の足元を照らして下さ
いました。
解剖学の分野では、系統解剖学の先
駆的著述があり、体表解剖学は現在も
医歯薬出版より発刊されています。
著 書 の 一 部
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ボンハン学説
ボンハン学説は、1961年~1965年に亘り、朝鮮民主主義人民共和国のキム・ボンハン博士によるツボ(経穴)やツボ
のつながった道(経絡)の形態や機能、特に経穴経絡の解剖組織学に関する研究です。
ボンハン学説は、古典医学に科学の光を当てようという発想のもとにはじめられた貴重な研究でありました。又、他の医学理論にたよることのない、古典医学の理論を尊重した経穴経絡の現代的研究であったことを藤原先生の論説から知ることができます。
先生が「ボンハン学説入門」の最終章の巻頭で言われている、ボンハン学説から何を学ぶかという理念をもって、先生亡き後も、臨床観察を軸にした知見を得る努力を続けています。
家兎内臓の周囲にある内外ボンハン管です(SatoruFUJIWARA,Ph.D)
サンアル学説
コロナワクチンの名前となった「メッセンジャーRNA」は、藤原知先生のボンハン学説入門(医道の日本誌・1966~7年)にも「サンアル学説とは何か」と題する中に登場します。
抗体を造る仕組みにメッセンジャーRNA が重要な役割を果たすという新しいワクチンの仕組みは、 サンアル学説を彷彿させるもの
があります。
「サンアル学説」はボンハン学説の第4論文で、その内容には、ゲノム作用を示すものがあります。
サンアルは、それまで常識的には考えられなかった細胞と結合していない核酸物質で、細胞に必要な成長物質を含むボンハン液の中で
細胞化してゆくのです。
サンアル体にはDNA、サンアル質にはRNAといった遺伝子情報を有し、
サンアル膜に覆われた特殊な顆粒であって、生命の持つ自然良能のメカニズム
を擁しているのです。
例えば特定臓器から生じたサンアルは、関連する体表の経穴(表層ボンハン
小体)に至り、臓器に戻って細胞化されます。
韓国では、すでに実証がすすみ、藤原先生が指摘していたサンアルの光学
的反応等の成果をあげています。
細胞の死滅と再生に係わり、病となれば、先ず療養し、鍼灸マッサージに
代表される経穴経絡を基本とする療治を受けることにより活性が促されます。
注)新型コロナワクチンの薬理作用には安全面から懐疑的な意見もあります。
サンアルは、むしろ自然獲得免疫のメカニズムに係わると類推するもの
です。鍼灸による免疫力の向上については、こちらをごご覧ください
2022/1/20
図中の文字は説明のために原図へ加えたものです
PVS
PVS(プリモ脈管系)経絡の解剖学的構造
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癌 PVSは潜在的転移経路であり、薬
物送達路です
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再生 マイクロセルはPVSに流れます
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新しい解剖学的構造 PVSはよく発達
した脂肪組織です(写真の青い部分)
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生理学 PVSは活動電位を示す興奮性
細胞を有しています
現在ボンハン学説は、蘇光燮(Kwang-Sup Soh)ソウル国立大学生命科学科名誉教授を中心とした韓国の科学者により、PVSという研究に進化しています。左写真は2010年、韓国で開催されたPVSのシンポジウムで、招聘を受けた藤原知博士と会頭の蘇光燮教授。固い握手をかわし、さらなる発展を祈念し、別れを惜しんでいました。
中央写真は、シンポジウム記念誌の表紙を飾るPVSとその注釈。マイクロセルとはボンハン学説にあるサンアル学説のサンアル(細胞の卵という意味)を指すものです。
藤原先生は当時ボンハン学説入門でサンアル学説を細胞のスクラップアンドビルド説と説明しています。細胞のリサイクル説が話題となっていますが、リサイクルにスクラップアンドビルドとして鍼灸が一役買うとしたら…PVS研究への期待はふくらみます。(現在研究は蘇先生の門下の先生方に引き継がれています)
鍼の旋回運動は、医道の日本誌平成13
年6.7.9月号に連載された拙稿の題名です。
私の経絡研究の端緒となりました。
ボンハン学説の重要な現象と相互関係
があると藤原先生より国際的シンポに肯
定派として推挙され、先生との親交を深
めるきっかけともなりました。
鍼の旋回運動
私がボンハン学説を知る資料となったのは、父が完全失明に至るまで、
継続購読していた、山と積まれた月刊同人雑誌「医道の日本」誌でした。
昭和63年、開業により自宅内を改造するため、雑然とされていた医
道誌を整理をすることになり、目次だけを見て、特に興味のひくものは
紐で括り別にする作業をしていました。その中に「ボンハン学説」の記
事があったのです。
先ずは藤原知先生の「ボンハン学説入門」そして「ボンハン学説を語
る」ボンハン学説映画「経絡の世界を観る」でした。
すでにボンハン学説は否定的とされているとの認識が私の中にあった
のですが、そこには、これが経穴だ、これが経絡だといわんがばかりの
写真がちりばめられていただけでなく、これにかける藤原先生の熱意と
気迫のこもった文章がありました。
かなりの時間、整理の手を忘れて、その場に引き込まれてゆくように
記事を読み続けていたことを覚えています。さらに驚かされたことがあ
りました。ボンハン学説の否定的要因につながる、臨床的追試とは、私
自身が過去に観察したことのある、鍼がゆっくりと円運動をする現象で
あったのです。(つづきを見る)
経穴観察
経穴(ツボ)の皮膚観察において得た知見です。ここでは「毛器官」について簡単に説明します。
経穴と発疹の相関をしらべたところ、白斑の中心部に毛孔が観察され、毛孔に相当する皮溝の交差部、
色素沈着点に生えた毛の存在や乳輪にある毛の存在を観察しました。
ツボを探すために色素を応用した観察(ボンハン学説にある探知法)の結果、毛孔に生じ易い角栓や
軟毛が着色され、角栓の抜去後の角質脆弱部等が着色されることがわかりました。
毛孔については、経穴の特異性を有す部位とし、イオン泳動法を用いて経皮伝導回路の入り口とする
説があります。
毛の密度ですが、1個体で軟毛を含むと100万以上という説があり、汗腺の密度は計り知れないと
されていますが、アポクリン腺は毛孔に開孔しています。
毛孔は毛器官を示す位置指標であり、本体は毛器官です。
毛器官(毛包ともよばれる)は生体で最も小さな器官とされ、再生と退縮を繰り返す生体唯一の器官です。
器官は皮脂腺という腺組織と共に結合組織によって囲まれ、立毛筋という筋肉、血管及び神経が導かれ
ています。
表皮欠損が生じた場合は、幹細胞が再生や上皮化を担いますが、その役目は表皮幹細胞であり、毛包
組織部分のバルジ(毛隆起)領域付近にある幹細胞とされています。
上皮(表皮肥厚)と間充織(疑集)相互作用が毛包の発生に関与するといわれ、これは再生医療に通じ
るメカニズムであり、鍼灸による経穴表層の機能と係わり、発生過程には形態が示唆されると考えます。