当院には、ハンディを持つ女性鍼灸マッサージ師が1名おります。
彼女は筑波技術大学健康福祉学部鍼灸学科を卒業し、国家資格を取得。付属統合医療センターで1年研修後、
私の父が盲ろう重複障害者の鍼灸マッサージ師であったことを従来のHPより知って当方に応募、2015年
春よりスタッフとして勤務しております。
現在、私の父が行っていた昔ながらの鍼按治療、さぐり鍼の技術を習得させ、温灸の可能性等に挑戦しています。
自分や家族にも、心身の障害は、いずれ及ぶことを考えなくてはならない高齢化社会を迎えています。
ハンディを持つ方々と共存を深めなければならない時代です。
高齢者や障害者と健常者が、お互いの理解と助け合いの精神の大切さを見つめなおし共存する。それが当たり前の
社会であってほしいものです。
ノーマライゼーションとは、そのような方向を目指すものと考えますが、いずれは自分に及ぶ身近な問題なのです。
さて、視覚障害者と鍼・灸・按摩指圧マッサージとの結びつきは歴史的にも古く、管鍼(くだばり)という日本鍼灸
の特長のひとつとされる鍼法を考案したのも視覚障害者です。(検校という、時の最高位の医師となられました)
又、戦後斯界存続の問題が表面化した時も、視覚障害を持つ先生方が、細々とながらも斯業を守ってきたという
蔭の功労があります。
この障害者が特有の職業を持つという例は、国際的にも類を見ないものです。
視覚障害者は抜群の手指感覚と集中力、持ち前の鋭い感性を所有し、斯業は正に天職であるといえます。
さらに、一意専心、真心の技術を提供しようという姿勢が、健常者より強いものがあることを私は知っています。
視覚職業の選択の広げて行く一方で、斯業との係わりは守ってゆかなければなりません。しかしながら現在斯界に限
らず、商業優先、弱肉強食の時代となり、類似業の増加、斯界健常者の増加、無資格者・内部資格者の増加などにより、
障害者の占める割合は激減し、自立、就業困難など、障害者は厳しい環境に立たされている状態です。
どうぞ治療や健康管理をかねて障害者の技術者を育てる機会をお与えください。視覚障害者の鍼灸マッサージ師に
温かい目で接していただきたく存じます。
なお、神奈川県鍼灸マッサージ師会は、このノーマライゼーションを斯業の特長であり、内外での望ましい将来に
向けた理想的方向と位置付けています。